商圏分析とは?自社の商圏強度・商圏内シェアを分析する方法

商圏分析とは

 

今回は、「商圏分析」について解説していきます。

 

商圏分析は現状分析のひとつで、商圏の中で自社(自店舗)が現在どれくらい顧客から選ばれているか?シェアを取れているか?を分析します。

それにより、競合に対する現在の自社(自店舗)の位置付けを明確にし、今後どのような経営戦略を立案していくのかの検討に役立てます。

筆者
佐治 秀保 / sajihideyasu

株式会社ビジネスのかんさつ 代表/オルタナクリエイツ 代表

広告写真家・クリエイティブディレクター
経営戦略 & WEBマーケティングコンサルタント(中小企業診断士)

プロフィール詳細

商圏分析とは?

ビジネスには「商圏」が存在します。特に店舗を構えている小売業や飲食業などは、そのエリアに住む消費者をメインにビジネスをしていると思います。

そのエリア内で、自社(自店舗)はどれくらいのシェアを取れているのかを把握していきます。

商圏分析のステップ

商圏分析は大きく以下のステップで分析していきます。

 

1.「商圏範囲」を設定する

2.「商圏強度」を算出する

3.「商圏内シェア」を算出する

 

「商圏範囲」「商圏強度」「商圏内シェア」と聞きなれない言葉が多いですね。順番に見ていきましょう。

1.「商圏範囲」を設定する

まずは「商圏範囲」を設定していきます。商圏範囲とは、自社のビジネスエリアの範囲です。

自社の商圏の範囲を正しく設定することは商圏分析において重要です。もし正しく設定しなければ、商圏強度や商圏シェアも変わり、有効な現状分析ができないため今後の経営戦略の立案も曖昧なものになってしまいます。

商圏範囲を設定する方法

商圏範囲の設定方法はいくつかあり、例えば以下のような方法があります。

  • 顧客データの参照
  • チラシやネット広告を出稿している地域
  • 来店客調査
  • ハフモデル・修正ハフモデル等の理論モデルで算出

 

もし「顧客データ」を保有しており、顧客の住所を把握している場合は、その顧客が多いエリアで設定していきます。

またはチラシやネット広告を出稿している場合は、そのエリアで設定してみましょう。

 

ビジネス形態にもよりますが、商圏分析のためにもその他のデータ分析を行う上でも、「顧客情報を取得する」ことは重要ですね。

顧客データで商圏範囲を設定する

顧客データを保有している場合は、まず顧客の住所を市区町村(〇〇町〇丁目の単位でも)でExcelやGoogleスプレッドシートなどでソートし、顧客が多いエリアから順番に並べましょう。

そして、どのエリアからの顧客が多いかをグラフなどで「見える化(可視化)」します。

例えばその中から、顧客の数が90%になるまでのエリアを「商圏範囲」として設定しましょう。

 

さらに見える化のために、そのエリアを地図で確認し、店舗からの商圏範囲の距離(km)を確認するのも良いでしょう。

2.「商圏強度」を算出する

商圏範囲が設定できたら、商圏強度を算出していきます。

商圏強度とは、商圏範囲のエリアごとに、自社(自店舗)が競合店と比較して優位であるのか・劣位であるのかを判断する指標です。

商圏強度の計算式

商圏強度は、以下の式で計算します。

商圏強度 = ①町丁別の来店客構成比(%)÷ ②町丁別の人口(もしくは世帯数)構成比

 

①町丁別の来店客構成比は、以下の式で計算します。

①町丁別の来店客構成比 = (a)町丁別の来店客数 ÷ (b)来店客総数

 

②町丁別の人口(もしくは世帯数)構成比は、以下の式で計算します。

②町丁別の人口(もしくは世帯数)構成比 = (c)町丁別の人口(もしくは世帯数)÷ (d)来店客居住地全体の人口

 

町丁別の人口(もしくは世帯数)は、自治体のHPなどでも確認することができます。

では次に、架空のビジネスと町丁で商圏強度を算出してみましょう。

商圏強度の算出例

例えば、皆さんが実店舗で「商品X」を販売していたとして、以下のようなデータ((a)町丁別の来店客人数)があるとします。

(c)の人口は、自治体HPから参照したとします。

 

注意点としては、来店客の期間(最終購買日)も区切ると良いです。

何十年も前から来店していない顧客を入れても、現在の顧客とは言えないかもしれません。例えば直近1年間の顧客の購買データから、町丁別に(a)来店客人数をカウントします。

 

▼自店舗における来店客構成比と町丁別の人口構成比

町丁名 (a) 来店客人数 ①来店客構成比 (c) 町丁人口 ② 人口構成比
A町1丁目 102人 4.1% 450人 4.2%
A町2丁目 358人 14.4% 1,200人 11.2%
B町1丁目 230人 9.3% 500人 4.7%
B町2丁目 569人 22.9% 2,840人 26.5%
B町3丁目 322人 13.0% 860人 8.0%
C町1丁目 689人 27.8% 1,300人 12.1%
C町2丁目 76人 3.1% 350人 3.3%
D町1丁目 134人 5.4% 3,200人 29.9%
合計 (b) 2,480人 100.0% (d) 10,700人 100.0%

 

①の来店客構成比を出すと、どの町丁に顧客が多いかが見える化しますね。

では、上記の①÷②をすることで「商圏強度」を計算してみましょう。

 

▼自店舗の商圏強度

町丁名 ①来店客構成比 ② 人口構成比 商圏強度①÷② 強度判定
A町1丁目 4.1% 4.2% 0.98 3次商圏
A町2丁目 14.4% 11.2% 1.29 2次商圏
B町1丁目 9.3% 4.7% 1.98 2次商圏
B町2丁目 22.9% 26.5% 0.86 3次商圏
B町3丁目 13.0% 8.0% 1.62 2次商圏
C町1丁目 27.8% 12.1% 2.29 1次商圏
C町2丁目 3.1% 3.3% 0.94 3次商圏
D町1丁目 5.4% 29.9% 0.18 強度なし
合計 100.0% 100%

 

商圏強度の数字が出たら、強度の判定をします。

強度の分類は以下のとおりです。

  • 1次商圏=2.0以上(自店舗が優位である商圏)
  • 2次商圏=1.0以上2.0未満(優位性は不明で競合状態の商圏)
  • 3次商圏=0.5以上1.0未満(自店舗が劣位である商圏)
  • 0.5未満(強度なし)

商圏強度から分かること

上記の例で言うと、「C町1丁目」は1次商圏で優位に立てていると言えますが、その他は2次商圏以下で、顧客は一定数いるものの競合に対して優位に立てているとは言い難い状況ということが分かります。

これが商圏強度として言えること(=現状分析のひとつ)です。

3.「商圏内シェア」を算出する

続いて、「商圏内シェア」を算出してみましょう。

商圏内シェアは、商圏内の消費購買力を算出して、金額ベースでシェアを見ていきます。

商圏内シェアの計算方法

商圏内シェアは、以下の式で計算します。

商圏内シェア = ③自店舗の年間販売金額 ÷ ④商圏内の消費購買力 × 100%

 

③自店舗の年間販売金額は、その店舗の販売データなどから実数値を抜き出します。

④商圏内の消費購買力は、『(e) 商圏内の人口(もしくは世帯数)× (f) 当品目の1人(1世帯)あたりの年間消費支出額』で算出します。

 

当品目の1人(1世帯)あたりの年間消費支出額は、総務省統計局の「家計調査年報」で確認することができます。例えば「商品X」の品目の1人あたりの年間支出額が12,000円だとしましょう。

 

▼自店舗の商圏内シェア

商圏強度 商圏内人口

(e)

年間支出額

(f)

④商圏内消費購買力

(e)×(f)

③自店舗年間売上高 商圏内シェア

③÷④

1次商圏 1,300人 12,000円 15,600,000円 3,580,000円 22.9%
1・2次商圏 3,860人 46,320,000円 4,650,000円 10.0%
1・2・3次商圏 7,500人 90,000,000円 5,020,000円 5.6%

 

1次商圏では消費購買力の22.9%のシェアが取れていますが、その他はまだまだ伸び代があるようです。

クープマンの目標値と照らし合わせる

シェアの数字を見るだけだと、それが良いのか悪いのかの基準が分からないと思います。

 

その場合は、以下の「クープマンの目標値」と照らし合わせると良いでしょう。クープマンはアメリカの数学者で、シェアの意味と目標値を定めています。

 

▼クープマンの目標値

1 独占的市場シェア(上限目標値) 73.9%
2 相対的安定シェア(安定目標値) 41.7%
3 市場影響シェア(下限目標値) 26.1%
4 並列的上位シェア 19.3%
5 市場的認知シェア(影響目標値) 10.9%
6 市場的存在シェア(存在目標値) 6.8%
7 市場橋頭堡シェア 2.8%

 

1次商圏は22.9%ありましたが「並列的上位シェア」であり、まだまだ市場に影響を与えられるようなシェアではなく、競合と拮抗している状態のようですね。

 

このように、自社のシェアとクープマンの目標値を参考に、経営戦略として「1次商圏のシェアをもっと獲得していく」のか、「2次商圏までのシェアをもっと伸ばしていく」のか「3次商圏までシェアを拡大していく」のか、どの方向性で行こうかという議論ができるようになります。

 

定量的にも、売上高を現在の5,020,000円から例えば6,000,000円にするために、『○次商圏のシェアを○%上げていこう!』という具体的な目標を立てることも可能となります。

 

戦術として、どのエリアにチラシやWEB広告などを打っていくのか、どこに看板を設置するのかなどの参考にもなると思います。

商圏分析をすると、戦略のヒントが見つかる

このように、販売データや人口統計、家計調査年報など様々なデータを掛け合わせて商圏分析をすることにより、「現在、自店舗は競合に対してどのような状態なのか?」「金額的なシェアはどれくらいで、どのエリアに伸び代があるのか?」などを把握することができます。

 

それが、今後の経営戦略立案のための「ヒントになる」でしょう。

商圏分析をする頻度

ビジネスは年次・月次・日次と日々状況は変わってきます。

商圏分析をするタイミングとしては、売上や客数の伸びが鈍化した、減少したなど、常に自社のビジネスを観察している中で何か違和感を感じ始めた時に、商圏分析をしてみるのも良いでしょう。

 

もしくは1ヶ月に1度や1年に1度など、定期的なタイミングをつくって分析するのもよろしいと思います。

自社で商圏分析が難しい場合は

自社で商圏分析が難しい場合は、弊社が中小企業診断士の目線で「経営診断」をしていますのでご相談ください。

また、社内人材に経営戦略立案プロセスを学んでいただく中長期戦略立案の「伴走型研修プログラム」もございますのでお気軽にお問い合わせください。

オンライン動画講座で学ぶ

オンライン動画講座『ビジかんアカデミア』でも、戦略について体系的に学べますのでぜひご活用ください。

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『商圏分析とは?自社の商圏強度・商圏内シェアを分析する方法』


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