前回は、顧客満足度調査(顧客アンケート)の作り方について解説しましたが、今回は戦略立案のための消費者ニーズ調査(来街者アンケート)の作り方について解説します。
顧客アンケートは、現在の自社顧客を対象に実施しますが、来街者アンケートは「顧客ではない人々」を対象に調査をします。これにより、「自社の認知度」や「将来の戦略立案のヒント」をつかむことができます。
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自社の顧客ではない方々に意見を聞き、消費者のニーズを把握するためのアンケート調査です。
自社商品やサービスへの満足度を把握する顧客満足度調査とは異なり、対象エリア内の世間一般的な意見を聞く調査です。
ただ、消費者のニーズをつかむだけでなく、現在の自社(店舗)の知名度を把握することもできます。
来街者アンケートの目的は大きく2点です。
顧客満足度調査のアンケート設計と同じく、「調査の目的を明確にする」ことがアンケート設計においては重要です。上記の大きな目的2点を念頭に入れて設計していきましょう。
調査するエリアは、自社の商圏内を中心に実施しましょう。新規出店などを計画中の場合は、現在の商圏内だけではなく将来の商圏内で実施しましょう。
消費者ニーズ調査の主な調査内容は、「回答者の属性」や「自社認知度の調査」、「ニーズ調査」があります。「現状分析」と「戦略立案」の着眼でそれぞれの目的を以下に整理します。
カテゴリー | 調査内容 | 目的 |
現状分析 | 回答者属性
(年齢・性別・エリア・職業など) |
①回答者の属性ごとの割合を把握する |
商圏内認知度の調査
自社および業界競合店名を含めた認知度 |
②現在の自社認知度を把握する | |
戦略立案 | ニーズ調査
・困りごと ・このような商品やサービスがあったら良いなど |
③将来の戦略立案に役立てる |
それでは目的別に調査内容を見ていきましょう。
「戦略立案」は、顧客満足度調査(顧客アンケート)で調査するものと同じです。どちらかでも良いですし、もし広く可能性を探るのであれば調査してみましょう。
回答者はある程度狙いを絞りましょう。
ペルソナと呼ばれる、自社の商品やサービスを受けるであろう人物像に狙いを定めてアンケートを実施します。
「ある程度」というのは、ペルソナ以外でも例えばペルソナの親や子、友人なども購入の可能性もあるかもしれませんので、自社の商品・サービスに合わせて回答対象者は考慮していきます。
まずは「回答者属性」ごとの割合を把握します。
属性は年代・職業・性別・居住エリアなどです。戦略立案のためのクロス集計で利用できるため、戦略として有効になりそうな項目と区切りで設定していきましょう。
次に、現在の自社(店舗名・ブランド名など)の認知度を把握する調査も入れてみましょう。
顧客と異なり来街者の場合は自社のことを知っているとは限りません。
例えばケーキ屋さんのアンケートを収集しようとしている場合、
「〇〇エリアでご存知のケーキ屋に丸をつけてください」などを設問して、複数回答可で選択肢に競合や自社の名前を入れておきます。回答者200名で自社のチェックが100個だった場合、その商圏内・ターゲット層に認知度50%という数値的事実が得られます。
最後に、将来の戦略立案のヒントを得るために、消費者ニーズを探っていきます。
アンケートにおいて、「このようにお店選びをする」「こんな困りごとがある」「こんな商品(機能・デザイン・価格)があったら良いな」という顧客のニーズを調査します。
例えばお店を選ぶ基準ひとつでも、
「自宅から近い」「信頼できる」「価格が安い」「商品の質が良い」「良い出会いができる」「自分に合ったものを提案してくれる」「デザインが良い」「接客が良い」など、さまざまな要素でお店選びをしています。
今後の戦略や、新規出店の考え方のヒントにもなり得ますので、消費者アンケートには必ず入れるようにしましょう。
調査したい内容はたくさんありますが、顧客は負担が大きいと感じると回答自体を拒否してしまうため、その設計方法はとても重要です。
「何問以内にしましょう」というセオリーはありませんが、体感的に長い・めんどくさい・答えたくないと思われないように工夫が必要です。
回答の方法にも工夫が必要です。大きく「選択式」か「記述式」の2種類がありますが、「選択式」にできるよう質問内容と解答欄を工夫しましょう。
「選択式」は集計・分析の際に定量的(◯件、◯%)になりますので、結果が明確になりやすいです。
工夫のひとつとして、アンケートの質問の順番も考慮が必要です。
アンケートの最初の質問項目はなるべく回答しやすい内容かつ「選択式」にすると良いでしょう。
答えにくい「回答者属性」はアンケートの最後にするなど、回答者の心理面も考慮が必要です。
来街者アンケートは、古くは紙ベースで作られましたが、現在は「Googleフォーム」などのWebサービスを使用することが多いです。
– Googleフォーム画面より
来街者アンケートの質問項目(アンケート設計)ができていれば、Googleフォームで作成するだけですので非常に簡単です。私もよく利用します。
「チェックボックス」や「ラジオボタン」「フリー記述」も直感的な操作で簡単に設置できますので一度お試しください。
ただし、Googleフォームであれば、そのURLにアクセスしてもらうことが必要になります。
自社にとってどの手法が収集しやすいかも検討しましょう。
もし自身や調査員が直接声をかけてアンケートをお願いする場合は、iPadなどのタブレットを持って聞いた内容を調査員が入力するとアンケート中も集計においても効率を図ることもできます。
アンケートを収集したら、集計をしましょう。
集計には「単純集計」と「クロス集計」があります。
単純集計は、質問項目ごとの単純な集計です。
例えば200件の回答を得られたとしましょう。
年代の質問で、40代が40件あったとしたら、「40代の回答が40件で割合が20%」という結果が単純集計です。これはGoogleフォームなどを使用すると瞬時に出ますので、計算する必要もありません。
紙でアンケートをとると、結果をエクセルなどに入力してそれをグラフ化するなどが必要ですが、Googleフォームだと質問ごとにグラフ化してくれますので、効率的に集計作業が可能です。
▼Googleフォームの集計結果例
– 某ブランド認知のアンケート集計結果例
クロス集計は、2つの項目を掛け合わせた結果を集計します。
例えば「40代」「お店を選ぶ基準」で掛け合わせることで、「40代がお店を選ぶ基準」といったような新しい集計結果が出来上がります。
ただしGoogleフォームではできませんので、クロス集計したい場合はエクセルのピボットテーブルなどで集計していく必要があります。
消費者ニーズ調査は、「現状分析」ならびに「戦略立案のヒント」を得るためにとても有効な調査です。商圏エリアのターゲット層の考えを知ることにより、自社の知名度や将来の戦略が見えてきます。
設計や取得方法に知恵と時間を使いますが、自社ビジネスに非常に有効な情報が得られますので、ぜひ顧客の考えを見える化していきましょう。
自社で消費者ニーズ調査のアンケート設計が難しい場合は、弊社が中小企業診断士の目線でアンケート設計のコンサルティングをしていますのでご相談ください。
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「伴走」とは、伴って走ること。
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